メインブログで紹介したグリム童話の削除されたストーリー『子どもたちが屠殺ごっこをした話類話』。
これによく似た話が江戸時代の作家の井原西鶴の推理小説『本朝桜陰比事』にある。
今日はその物語を紹介したい。
昔、京の町で7歳の子供が誤って9歳の子を小刀で刺して死なせてしまう事故が起きた。
人を殺してしまった子供は奉行による裁きの受けることになったのだが、子供の家族はまだ思慮分別のない幼子のしたことなのでと寛大な措置を懇願し、被害者の遺族は厳罰に処すように強く訴える。
この時代の裁判官であるお奉行さまは人形と小判を取り出し、「その子が人形を選べば御咎め無し、小判を選べば分別がつくと判断して死罪とする。明日子供をここへ連れてくること」と宣言して一旦はお開きとなった。
子供の家族はその夜、お奉行さまが出した人形と同じ人形を入手し、その子供に人形と小判を見せて「小判を取ったら殺されるぞ」と何度も何度も同じことを何百遍も言い聞かせた。
果たしてあくる日、奉行から「小判を取れば死罪だぞ」と言われながら人形と小判を出された子供は家族の願いもむなしく小判を選んだ。
被害者の遺族は大喜び。よっしゃ死罪じゃとはしゃいでいる。
子供の家族は声を上げて泣いた。
しかし意外な判決が下される。
「子供は無罪とする。この子にまだ分別がないことがよく分かった。あれだけ小判を取れば死罪だと言ったのに小判を取ったのがその証だ。この子は死罪の意味すら分かっていないのだ」とお奉行さまは言ったとさ。
おそらく小判を取っても人形を取ってもお奉行さまは罪を問わないつもりだったのだろう。
どうだろう。グリム童話では何の救いもなかった話が、なんだかハートフルストーリーに変貌しているw西鶴すげえぜ!
ちなみにこの西鶴の連作小説に登場する奉行は、大岡越前に次ぐ名奉行として名高い京都所司代の板倉勝重と重宗の親子がモデルだそうである。
重宗については死刑囚に対して刑を延期にしてでも反論の機会を与えて慎重に取り調べ、言い分が全てなくなってから刑に処したなどの逸話が遺されている。
〈参考資料〉
フリー百科事典Wikipedia
〈関連記事〉
【グリム童話】子どもたちが屠殺ごっこをした話【削除された話】
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Historia(副)
世界史とか神話とか哲学とか
2014年1月26日日曜日
2014年1月21日火曜日
【日本の妖怪】旧鼠(きゅうそ)
旧鼠とは古いネズミ。ネズミが歳を取って齧歯類から妖怪にジョブチェンジしたものと思われます。
江戸時代に書かれた『絵本百物語』によれば、室町時代の文明年間(1469~1486年)、出羽国(現在の山形県と秋田県)の那曾和太郎(なそのわたろう)さんちの馬小屋にでかいネズミが棲み付いた。
このネズミは那曾家の飼い猫ともなぜか仲良くなり一緒に遊んだりする。
しかし猫の方は5匹の子猫を遺して死んでしまう。
ネズミは孤児となった子猫たちを大きくなるまで育てたのだそうな。
後の江戸時代にこの地を訪れた松尾芭蕉はこの話を聞き、「逆に猫がネズミを育てた話もあるよ」と述べている。
また大和国(現在の奈良県)にいた旧鼠は上の美談とは反対に、妖怪化する前は猫に虐げられた恨みを晴らすかのように猫を喰っていたと言われている。まさに階級闘争w
挿絵は大きなネズミが子猫をくわえている様子が描かれているが、捕食しているとも、育児をしているとも解釈できるね。
同じく江戸時代の『翁草』にも旧鼠の記述があり、宝暦年間(1751~1763年)の初め頃、名古屋で夜な夜な旧鼠が現れて行灯の油を舐め取って消してしまうと言うゆゆしきエネルギー問題が発生した。
人々は猫を使って旧鼠を退治しようとするも、旧鼠が強すぎて猫は返り討ちにあってしまう。
困った人々はさらに強い猫を探して連れて来るも結果は同じだった。
「窮鼠(きゅうそ、追い詰められたネズミ)、猫を噛む」のことわざにちなんだ語呂合わせなのか大ネズミは「旧鼠」と呼ばれたとか。
結局解決してないみたいだけど大丈夫なのか名古屋。名古屋の愛猫家は気を付けて!TwitterのRTで拡散していいよ。
また香川県に伝わる民話では、魚を盗んだ猫が漁師からしばかれていたところをある坊さんが救った。
すると猫が恩返しとして、坊さんが住んでいる寺に7貫(約26㎏)の旧鼠が住みついていて坊さんの命を狙っているよと警告し、仲間の猫を集めて旧鼠を退治したそうな。
江戸時代の『三州奇談』に「妖鼠(ようそ)」なる類話が載っている。
越中国(現在の富山県)の五社村と道明村の間に墓場があり、そこに妖鼠が棲み付いて周囲の動物を喰いまくるという地域の生態系を破壊せんとする狼藉を働いておりました。
安永7年(1778年)、五社村の伊兵衛なる力自慢の若者がこの墓場を通りかかった際に妖鼠に襲われ、伊兵衛はさんざん噛みつかれながらも妖鼠を締め上げて見事討ち取った。
妖鼠は体長2尺(約60cm)、尻尾は2尺(約60cm)の大きさだったそうな。
この旧鼠のメディアへの露出としては、京極夏彦の小説『前巷説百物語』、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』、漫画『ぬらりひょんの孫』、MMORPG『信長の野望Online』、ソーシャルゲーム『あやかし陰陽録』などに出演しているみたい。
〈参考資料〉
フリー百科事典Wikipedia
死せる魂の会様
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江戸時代に書かれた『絵本百物語』によれば、室町時代の文明年間(1469~1486年)、出羽国(現在の山形県と秋田県)の那曾和太郎(なそのわたろう)さんちの馬小屋にでかいネズミが棲み付いた。
このネズミは那曾家の飼い猫ともなぜか仲良くなり一緒に遊んだりする。
しかし猫の方は5匹の子猫を遺して死んでしまう。
ネズミは孤児となった子猫たちを大きくなるまで育てたのだそうな。
後の江戸時代にこの地を訪れた松尾芭蕉はこの話を聞き、「逆に猫がネズミを育てた話もあるよ」と述べている。
また大和国(現在の奈良県)にいた旧鼠は上の美談とは反対に、妖怪化する前は猫に虐げられた恨みを晴らすかのように猫を喰っていたと言われている。まさに階級闘争w
挿絵は大きなネズミが子猫をくわえている様子が描かれているが、捕食しているとも、育児をしているとも解釈できるね。
同じく江戸時代の『翁草』にも旧鼠の記述があり、宝暦年間(1751~1763年)の初め頃、名古屋で夜な夜な旧鼠が現れて行灯の油を舐め取って消してしまうと言うゆゆしきエネルギー問題が発生した。
人々は猫を使って旧鼠を退治しようとするも、旧鼠が強すぎて猫は返り討ちにあってしまう。
困った人々はさらに強い猫を探して連れて来るも結果は同じだった。
「窮鼠(きゅうそ、追い詰められたネズミ)、猫を噛む」のことわざにちなんだ語呂合わせなのか大ネズミは「旧鼠」と呼ばれたとか。
結局解決してないみたいだけど大丈夫なのか名古屋。名古屋の愛猫家は気を付けて!TwitterのRTで拡散していいよ。
また香川県に伝わる民話では、魚を盗んだ猫が漁師からしばかれていたところをある坊さんが救った。
すると猫が恩返しとして、坊さんが住んでいる寺に7貫(約26㎏)の旧鼠が住みついていて坊さんの命を狙っているよと警告し、仲間の猫を集めて旧鼠を退治したそうな。
江戸時代の『三州奇談』に「妖鼠(ようそ)」なる類話が載っている。
越中国(現在の富山県)の五社村と道明村の間に墓場があり、そこに妖鼠が棲み付いて周囲の動物を喰いまくるという地域の生態系を破壊せんとする狼藉を働いておりました。
安永7年(1778年)、五社村の伊兵衛なる力自慢の若者がこの墓場を通りかかった際に妖鼠に襲われ、伊兵衛はさんざん噛みつかれながらも妖鼠を締め上げて見事討ち取った。
妖鼠は体長2尺(約60cm)、尻尾は2尺(約60cm)の大きさだったそうな。
この旧鼠のメディアへの露出としては、京極夏彦の小説『前巷説百物語』、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』、漫画『ぬらりひょんの孫』、MMORPG『信長の野望Online』、ソーシャルゲーム『あやかし陰陽録』などに出演しているみたい。
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